ピティナ・ピアノステップ

20年目のピティナ・ピアノステップ~「ステージ経験の提供」を貫く~

20年目のピティナ・ピアノステップ~「ステージ経験の提供」を貫く~

ピティナ・パスポート、アドバイザー、トークコンサート、ステージポイント、継続表彰、ステーション・・・。これはみな、ピティナ・ピアノステップから生まれた独自の用語です。

1997年に産声をあげたステップも早20歳となりました。この間(今年9月まで)、北は北海道名寄市から、南は石垣島まで、のべ5,352地区で開催され、参加者数は累計514,458人に達しました。

地域の指導者、アドバイザー、ステーションの三位一体による運営で支えられるステップ。出演・指導・運営・企画・協賛、それぞれの立場で「参加する」ことをオープンに受け入れるシステムであるゆえに日々少しずつ成長し、いまでは年間46,000人のピアノ学習者に「ステージ経験」を提供するまでになりました。

本日は、「20」の数字にちなんでの、理事、ステーション代表者、参加者のインタビューをご紹介。この秋もピティナ・ピアノステップは「いつでもどこでもアドバイスがもらえる公開のステージ」として、みなさまのご出演・ご参加をお待ちしております。

■年表
これだけは覚えておきたい?!ステップの20年
1997
ピティナ本部事務局がある東京都豊島区巣鴨で初めての地区が開催。後の巣鴨ステーションです
1998
実施事務局として「支部」に加え、「ステーション」が誕生しました。水海道ステーション、一宮ステーションなど
2000
継続表彰の創設・・・ステップの中で、今も昔も、
これだけが唯一の「表彰」です
2002
文部科学省からの後援を取得。現在、半数の地区で市町村教育委員会からの後援もいただいています
2003
ステップ課題曲が3000曲規模に
2004
アドバイザー派遣委員会が発足。
入場無料の「トークコンサート」が充実していきました
2006
インターネット申込開始。
この年、参加者数が3万人を超えました
2007
学校長による継続表彰授与(朝礼など)の事例が登場
2008
指導者のステップ参加が目立ち始める
2010
ホール特別設備費の導入開始/初めての継続表彰100回受賞者が登場
2012
参加者数が4万人を超える
2013
参加要項が無料に
2014
開催地区数が500を超え、トークコンサート開催地区が4割以上に
2015~2016
時間帯指定パス導入開始/参加者数累計50万人を突破/
ご当地シールの数が150を超える
■インタビュー①
ステップ運営委員会委員長として20年を振り返る
戸沢睦子先生
ステップ誕生からの20年間を振り返って、今どのような思いでしょうか。

20年、ピアノの先生たちにお教室の「窓を開けてくださいね」と声をかけ続けてきました。子どもたちに外の空気を吸わせてあげてほしい、先生方にも、新しい発見が必ずあるはずですよ、と。

ピアノの先生が子どもたちを預る期間は、大方が学校の担任の先生よりも長い場合が多いですね。その責任もまた軽いものではありません。が、ピアノの先生はオールマイティでなくてもいいと思っています。お医者さんに例えれば、内科の先生もいる、耳鼻科の先生もいる。その生徒にとってどれだけいい先生であるかがポイントではありますが、知らないことを恥ずかしいと思わず、一歩外に出て常に学び合う姿勢は共通して大事なことだと思っています。そのことをずっと言い続けてきた気がします。

個人の感覚とか常識って、簡単に乗り越えられるものではないですよね。
2015年7月、さいたま市河合小学校にて、児童向け音楽ワークショップを実施。

例えば、私の主人は音楽家なので、ときどき、生徒を代わりに見てくれることがあるのですが、私がついつい「できないだろう」と思ってやらせないでいたことを、全然別の角度から促して、ぱっとできてしまうことがあります(笑)。

指導者にとってそういう学び合い、気づき合いができるような、自然体で参加できる学びの場がほしいと思っていました。

また、当時、いろいろな検定があり私も活用していましたが、残念ながら(何となく)上からの「お墨付き」的ニュアンスのものが多く、生徒に検定を受けさせても、先生同士が主体的に学び合い、気づき合うという契機はなかなか生まれにくいものでした。諸々の経験から従来の『検定』とはコンセプトの違う新しいシステムが出来たらいいなと。

ピティナ創立者の(故・)福田靖子先生と仕事を一緒にしているとき、個人で行動するのではなく、文科省まで含め、組織で動かすということをされていて、大変影響を受けました。ピティナなら、私の思う「ただの検定とは違うシステム」が作れるかな、と感じました。

20年の歴史の中で、ここが一番の区切りだったと感じることはありますか。
戸沢先生のステーションで行われている、ステップでの合唱

一番の画期は、ステーションができたことだと思います。競合関係ではなく、指導者が10人集まれば自発的に運営できるのだ、ということを毎年言い続けてきました。1年に30カ所でステーションが誕生しています。ステップが受け入れられたということは、組織的なものが受け入れられたということだと思います。

ピティナで学びたい、ピティナの先生方と一緒にやりたい、という動機がなければ、「継続」とか「生涯学習」という理念だけではここまで広がらなかったでしょう。

「ただの検定とは違うシステム」のコンセプトが生まれた過程について、もう少し教えてください。

そのころ、私は近所のママ友と書道を始めて数年たっていました。先生がすばらしかったんです。楷書→行書→草書→ひらがなと進むんですよ、とご指導頂きました。級があがると、わくわくする。向上すると、面白くなってくる。挑戦するものがあるから夢中になる。ピアノにもそんなシステムが作りたいと思いました。

大人になってから習い事をしたことによって見えてくるものってあるのよね。筆を置くそのタイミング、その感覚は、演奏と似ています。同じ習字でも、五年経てば、五年経ったなりの、違う感覚が自分に芽生えます。

「うまく行った!」と思っても、その五年後には、さらに成長している自分がある。こんな感覚を会得するには、ステージ経験ほど適したものはないんです。ピアノのほうへ歩くときの感覚の変化、ピアノの椅子への座り方の変化、全部ひっくるめて、ステージをいっぱい経験させてあげたい。

「継続、向上、個性」というステップの理念は、個人的なものへの応援、に寄りすぎているので、もっと「学び合い」に向かうべきだと考えることはありませんか。

私は、ステップが担っている使命は音楽教育の根っこのサポートだと思うんです。そこを考えると、まだ個人的なものへの応援でいくべきかな。ステップの参加者が、まだ46,000人でしょう。もし全国の先生が手をつないでステップに乗っかったら、指導者のレベル、学習環境はまだまだよくなります。すべての学習者にいい環境を整えてあげたい。狭い家庭のプールより、広い広いプールを運営して、そこで存分に泳いでもらいたい。

そうした戸沢先生のメッセージに共感している指導者は、どんどん増えているように感じます。
上総治子先生(巣鴨ステーション)と。

共感してくれる人が増えているのは、喜びですね。

さっき、ステーションができたことがステップの歴史で画期的と言いましたが、もう一つありました。私が病気をして外に出られなくなったことがあるんです。そのとき、私の代わりに各地でステップの説明をしてくださる委員の先生が増えたんです。
ステップに関して当事者意識をもって取り組んでくださる先生が増えたことで、私自身が助けられましたし、ステップが本当に広がるひとつのきっかけになった。でも、これこそ、個人ではできない、組織ならではの力なのではないでしょうか。

■インタビュー②
次のステップ開催が運営者として20回目!「みんな自分と関わりあった生徒」
花崎桂子先生(さぬき高松ステーション代表)

ステーション活動を続けるうちに新たなメンバーが入ってきたり、メンバーの中から「勉強の機会が欲しい」といったニーズが芽生えてきて「高松バスティン研究会」が誕生したりと、じわじわと輪が広がっています。支部との関係でいえば、枝(各グループ)で活動した成果が幹(支部)に還元されていると感じます。

また、発足した当初から地元で活躍されている、ヴァイオリンの西浦弘美先生、チェロの片山智夫先生には10年間ずっとステップのアンサンブル企画を見守って頂いています。アンサンブルは、始めは身内ばかりでなかなか広がらなかったのですが、多喜靖美先生にお世話になり、室内楽クラスを開講するようになってからは今まで入ってこなかった層が加わり、広がりが生まれました。

また4年前からバッハコンクールも運営し始めたのですが、新たに・初めて・コンクールに挑戦してみようという先生や、バロックに対する意識を高く持つ先生が増えてきた気がします。

長年続けていくほど、各メンバーの長所が見えてきて新たな挑戦の原動力になるし、ひとりひとりのご縁をつなぐことで、魅力的な講師やアドバイザーとの新たな出会いが得られます。本当に、スタッフは宝ですね。

ピアノ指導者はどうしても個人主義になりがちなので、ポロシャツを作り、「みんなで1つのことをしている」感覚になってもらった

ステーションを運営していると、自分の生徒以外の演奏も、ほぼ全員分聞くことになるので、2,3年連続して参加している人だと上達をはっきりと実感しますね。顔見知りであれば思わず本人や保護者に「上手になったね」と伝えたくなります。仲間としての先生に対しても、指導力が向上したのを認め、お互いを称えあえるのは幸せだと思います。

今は、ステップに参加する方は「自分の生徒と、よその生徒」という認識ではなく、「みんな自分と関わり合った生徒」。彼らの成長は身内のこととして喜ばしく感じます。

■インタビュー③
ステップは指導者の卵を応援!~20歳で、しかも20回継続表彰~
加藤絵里さん(愛知県/グランミューズ会員)/知立ステップ(6月19日)に参加

加藤さんが初めてステップに参加したのは小学2年生の時でした。「小学校から友達のお母さんにピアノを習い始め、その先生に薦められて参加しました。当時は広い舞台でピアノを弾く機会が貴重で、とにかく楽しんでいたことを覚えています。」

高校は進学校で理系を専攻していたので勉強が中心、ステージにも立てずにいました。しかし今後の進路を考えるにあたり「ピアノを十分に弾けない生活は嫌だ!」と思っている自分に気づいた加藤さんは、大学で音楽を専攻することを決心。それ以来、試験のリハーサルとしてステップを都度、活用しています。

今は少しずつ子どもたちの指導も始めたところです。「自分が教えた曲を生徒がステージで弾いたのは特に感慨深い経験でした。先生に教えて頂いたピアノの楽しさを、今度は自分が生徒に伝えていきたいです。」 ステージ経験が与える力は、次の世代へと引き継がれていきます。

■インタビュー④
ステップは社会人のチャレンジも応援!~次に参加すれば20回継続表彰~
畑 勝法さん(愛知県/40代男性)/北名古屋ステップ(9月25日)に参加予定
継続15回表彰の記念写真。(右から2番目が畑さん)

IT企業に勤務する畑勝法さん(グランミューズ会員)は、5年前に電車で見かけたピアノ教室の広告がきっかけでピアノを習い始めました。音楽雑誌でステップのことを知り、2014年の2月に初めて参加。「演奏後の充足感に魅了され、2回目3回目と参加しているうちに、いつの間にか次の参加で20回表彰になっていました。」

昨年の夏から独学で練習しているため、ステップは純粋に楽しむだけでなく、一種の"レッスン"としても活用しています。60字コメントでは気になる点を素直に書いて、演奏後にアドバイスを繰り返し読んで吸収。地道な努力が功を奏し、畑さんのピアノは5年の間に急成長。今年はピティナのコンペ(グランミューズ部門)に参加しました。

最近はステップで顔見知りになる方も増えてきたそう。「今年の6月、初めてある方からコミュニケーションカードを受け取りました。"サラバンドの演奏が良かったです"という内容でした。そして次のステップで一緒になったとき"よくお見かけしますね"とお返事を書きました。」

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