ピティナ・ピアノステップ

トークコンサート、年間300地区を突破!~本物の演奏が、もっと身近になるために~

トークコンサート、300地区を突破!~ピアニストとステーションの共同作業が与えるインパクト~

入場無料で地域の全ての人々に開かれた、ピティナのトークコンサートは、2016年度(3月末まで)の開催数が、313地区となりました。これは実にピティナ・ピアノステップ地区全体の56%に及びます。

クラシック音楽の入門編であり、アウトリーチ活動でありながら、その最大の特徴は、ステップ参加者と同じピアノを使ってピアニストがその場で演奏してくれることでしょう。

ステップの会場では、ピアノを学習する子供たち、愛好家の皆さんが客席の多くを占めますので、同じような入門コンサート、アウトリーチ活動に比べ、ピアニストの本領が直接的に伝わる教育効果・影響力の極めて高い企画であると言えます。

ここまで継続し、数を増やしてきたからこそ、一人一人の観客だけでなく、運営経験を積んだステーション、そしてピアニストにもそれぞれ、新しい発見をもたらしているようです。この週末もあちこちで開催されているトークコンサート。ぜひお近くの会場にご来場下さい!

◆ 開催数の推移 ◆

トークコンサートを開催する地区はこちら
トークコンサートとは・・・

本日の記事では、ピアニスト、ステーション、観客のそれぞれを代表してトークコンサートについてのコメントをいただきました。

インタビュー
インタビュー①
菊地裕介先生(アドバイザー)
ピアニストにとっての「現場」であり「最前線」と捉える

トークコンサートの観客は、そのピアニストを知らずに集まっているかもしれないし、プログラムはどちらかといえば耳なじみのあるものに偏りますので、選曲自体はリサイタルに比べると苛酷ではないんですが、やはり演奏は常に必死ですね。

特に、ステップは毎回ステーションによって演奏条件も雰囲気も違うし、ステップメッセージを鉛筆で書き続けた直後に演奏することもあるし、何というか、ひたすら「現場」であり「最前線」なんですよね。その意味でやっぱり常に苛酷さがあるんです。その数をこなす過程で、ピアニストとして、違う磨かれ方をしていると思います。

東京文化会館でリサイタルをする、というのとは違う演奏の仕方がある、ということですね。アドバイザーを始めた若い頃は分からなかったかもしれないですが、ともすると完璧さを追求して「人に伝える」「聴かせる」という次元から遠のいてしてしまうことってあります。

昔は、自分にとっての完璧さを逃してしまうと自分が激しく許せませんでした。でも、ステーションの先生方がすごく喜んでくださるのをあちこちで経験すると、演奏って、いつも完璧さを追求する行為では必ずしもない、ということを感じるようになりました。「完璧なものを聴かせてみせよう!」という意識で張りつめていた時代に比べると、何かが変わりました。

その町、そのホール、その楽器によって、常にある種の即興性があって、そのときに発するサービス精神みたいなものと相まって、すべてコミュニケーションなんですね。今では、トークコンサートの最後に「完璧な演奏を聴きたかったら、僕のCDを買って下さいね」と冗談交じりに言うんです(笑)

インタビュー②
大野芳枝先生(仙台まほろばステーション代表)
ステーションの役割の大きさを自覚させてくれたトークコンサート

仙台まほろばステーションのステップは今年で4回目。トークコンサートは毎回企画しました。ステーション発行のメルマガが告知手段としても役に立っています(現在は毎回約90通発行)。
1年目は、ステップを地域の方に広く知っていただくために、NHKラジオ出演などで著名な小原孝先生をお招きしました。その後、私自身がぜひお呼びしたい先生を、年ごとにタイプを変えて、金子一朗先生、黒川浩先生、そして今年は内藤晃先生にお願いすることができました。

皆さん本当に素晴らしいピアニストで、短い時間とは言え、これが入場無料で提供されていることにもっと驚きがあってもいいですよね(笑)

トークコンサートピアニストと一日ご一緒すると、計画と準備にいかに時間や労力を割いて下さっているか、よくわかります。一方、ステーションとしても、ピアニストへの謝礼はもとより、ステップの運営の時間をコンサートのために別に確保しなければならないんです。そうやって、ステーションとアドバイザーが、互いに違う方向から一生懸命、力を出し合って、音楽の普及のためにいわば貢献しているんだな、とそんなふうに自分たちの役割を発見する4年間でもありました。

節目の次回5回目は、生徒たちにとって一番身近な我々スタッフによる、アットホームなトークコンサートを考えています。プロのピアニストとは違いますが、音楽の楽しさが一人でも多くの方に伝われば嬉しいです。

インタビュー③
佐々木碧海 ささき あおみ さん(ステップ参加者、広島県在住/小学校3年生)
コンサートを聴くたびに、広がる新しい世界

生まれた頃からお家にピアノがあった佐々木碧海さん。お母さん、おばあちゃんに見守られながら、初めてステップの舞台に立ったのは幼稚園年中のときでした。そのときに出会ったのが安倍美穂先生のトークコンサート。

小学生以下の子どもが行けるコンサートは少ないため、碧海さんにとっても心に残る体験となりました。お母さん、おばあちゃんはもちろんのこと、碧海さんも知っている「花は咲く」の演奏はコンサートで聴く楽しさを味わうきっかけとなったようです。その後、親子で色々なクラシックコンサートへ通うようにもなりました。

また、コンサートに出かけるようになってからは、聴いた曲を自分でも小学校1年生のときにはチェロとのアンサブル企画にも挑戦。チェロとの合わせでは、ホールで聴くよりもずっと大きなチェロの音に驚き、アドバイザーの多喜靖美先生と谷口賢記先生のトークコンサートも聴いて感動したそう。お家での練習やレッスンという限られた空間では出会うことがなかった「ピアノ以外の楽器」の音を知ることになりました。弾きたいと思うようにもなりました。小林愛実さんのリサイタルに行ったときには、「私も『ノクターン遺作』を弾きたい」と言い、楽譜を購入。演奏することはままならないものの、一生懸命音を拾っていました。

コンサートを聴くという経験は新たな発見をすることに留まらず、表現したいという想いも掻き立てます。村井文先生(正会員)から「(ステージに)でてみる?」と訊かれたら「でる!」と即答する碧海さん。音楽を「聴く」経験は確実に、ピアノを「弾く」喜びへと繋がっています。

過去4回にわたって開催されたトークコンサート祭り。一日に12組のピアニストが、15分ずつそれぞれの持ち味を生かしたプログラムで、夏休みや春休みの子供たちを魅了し、自由研究などの素材を提供したほか、ここから全国を飛び回るアドバイザーピアニストが幾人も誕生していきました。

トークコンサートの翌日、地元の小学校で「学校クラスコンサート」を開催することもありました。また、セミナー講師として招かれるピアニストも増えています。

愛媛県伊予市の小学校にて、宮谷理香先生のクラスコンサート
出演しているのは、どんなピア二スト?

トークコンサートピアニストは、ステーションからリクエストができるシステムになっています。
2014年度以降で、もっとも多くご出演・協力くださっているのは以下のピアニスト、先生方です。(敬称略、数字は回数)

◆ 50周年企画「対談インタビュー」 第2回 林苑子×本多昌子

林苑子先生、本多昌子先生によるピティナ50周年企画対談でも、トークコンサートのことを取り上げていただきました。「新進気鋭のピアニストの活躍を後押ししている」「トークの入ったコンサートが世の中に増えてきているが、そのきっかけだったのかも」などと、嬉しい言葉をいただきました。

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