ピティナ・ピアノステップ

アドバイザーは手で語る 中川京子先生

アドバイザーは手で語る

連載第8回目は、ステップトークコンサートでおなじみの中川京子先生です。2005年から既に15回のトークコンサートをしてくださってきた中川京子先生。先生の美しい音に魅せられ、全国各地でファンが増え続けています。

中川京子先生
なかがわきょうこ◎東京芸術大学卒業、第47回日本音楽コンクールピアノ部門第2位。1991年「大阪文化祭賞」本賞受賞。1992年日本ショパン協会第159回例会にオール・ショパン・プログラムで出演、好評を博す。以後、オールショパンプログラムのリサイタルを多数開催。オーケストラとの協演、NHK-FM、TV番組、ヤマハ・ソニー音楽芸術振興会主催コンサート出演、教育用ビデオの演奏収録など各方面にわたり活動中。当協会正会員。
中川京子先生
楽譜の眺めが変わった

演奏活動を続けて来られて、ご自身の演奏で最近変化を感じることはありますか?

「若い頃と比べて、"楽譜の眺め"が変わったところですね。若い頃は、レパートリーを広げることを第一に考えていましたので、曲を暗譜して、整える段階で"出来上がり"として、皆さんの前で演奏していたように思います。お漬物で言うと、"浅漬け"だったんですね。もっとおいしくなるべき食材(すなわち作品)に対して、申し訳なかったかなと、今頃気づきました。 演奏会レパートリーにのせようと思い、20代の頃に演奏したドビュッシーの『版画』のカセットテープを取り出して聴いてみたところ、今の演奏と全然違っていて、非常に驚きました。昔は、楽譜どおりのリズムできちんと弾き過ぎていたり、強弱はあっても音質に配慮がたりなかったりしていました。今は、イメージを膨らませて多少のゆらめき・うねり・勢いも加えたり、深く厚い音や霞がかかったような淡い音など、場面に応じてふさわしい音質・音量を考えて演奏しています。子育てなどバタバタしていた当時と違って、今はゆとりを持って作品と向き合ううちに、楽譜が違って見えてきのだと思います。物事の考え方が当時と変わってきたこともあるでしょうね。作品との付き合いは人付き合いと同じで、年月とともに深まって変化していくものです。この先、60歳、70歳となって、また楽譜の眺めが変化するのなら、年を重ねるのも悪くないなと思っています。 アドバイザーとしてステップへ行くと、子どもの演奏を沢山聴かせていただきます。あるステップでご一緒になった先生がおっしゃったことで、非常に記憶に残っているのですが、「子どものときにしか描けない絵があるように、子どものときにしかできない演奏があるんですよ、」と。確かに整っているわけではなくって、拙い演奏なのかもしれませんが、子どものときにしかできない演奏なのだ、と考えると、その演奏がとても素晴らしいものに思えるんです。別の価値があるんだな、と。

子どもたちが私のよいところを引き出してくれる
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ご自身の演奏会と比べて、ピティナのトークコンサートは、正直弾きやすいですか?それとも弾きにくいですか?演奏に変化は出てくるのでしょうか?

演奏会ですと、お客様の客層がやはり高いということもありまして、会場内は静かで落ち着いているので、確かにその点では弾きやすいですよ。でも、私はステップのトークコンサートや学校クラスコンサートでの演奏が、最もリラックスしていい演奏ができると思っています。子どもたちの反応って正直ですよね。演奏を楽しんでいるのか、退屈してしまっているのか、表情や動作ですぐにわかります。その反応のよさに、きっと私ものせられるのでしょうね。子どもたちが私のよいところを引き出してくれるんですよ。昨年11月に行った私の演奏会では、実は「聴いてくださっているお客様は子どもたちなんだ」と自分に暗示をかけて演奏に臨んだほどです(笑)実際、今までのどの演奏会よりも満足の行く演奏ができたように思っています。ステップのトークコンサートや学校クラスコンサートの演奏の機会をいただけたことで、自分の演奏にのびやかさが加わって、成長したのではないかと感謝しています。

そうおっしゃっていただけると嬉しいです。ありがとうございます。

作曲家と聴き手の橋渡しを

先生のトークコンサートでは、ピティナの課題曲になっている邦人作曲家の作品をレパートリーに入れることも多いようですが?

ピティナの新曲課題曲公募2次審査の実演も一部担当させていただいていることもあって、ピティナのコンペ課題曲、例えば佐藤臣先生の「はじめてのお買い物」や安倍美穂先生の「カードマジック」をトークコンサートのレパートリーに入れることも多いです。作曲家の方々と直接お話して、作品誕生のお話や作品への思いをお聞きすることも多いので、そういったお話をまじえて演奏すると、子どもたちも作曲家の方々も喜んでくれます。作曲家と聴き手の橋渡し的な役割かな、と思います。5月23日西条(愛媛県)や5月31日の豊岡(兵庫県)のステップのトークコンサートでも弾かせていただく予定です。

【コンサート情報】

西条ステップ

  • 5月23日(土)
  • 西条市総合文化会館 小ホール
  • 西条ステーション

豊岡ステップ

  • 5月31日(日)
  • 豊岡市民プラザ リハーサル室アイティ7階
  • こうのとり豊岡ステーション
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