ピティナ・ピアノステップ

アドバイザーは手で語る 中西 誠先生

アドバイザーは手で語る

明るく気さくなキャラクターで子どもたちにも大人気のアドバイザー、中西誠先生。先生の幼少期の音楽との出会いから、それを根底に持つ先生の音楽観について、ときに真面目に、ときにユーモラスに語っていただきました!

中西誠先生
なかにしまこと◎東京音楽大学ピアノ演奏家コース卒業。同大学院を首席で修了。日本及び世界各地でソロリサイタルを重ねる。飯森泰次郎指揮関西フィルハーモニー管弦楽団をはじめとした多くのオーケストラや日本を代表する演奏家との共演多数。2001年大阪文化祭賞、及び年間のベストコンサートとして音楽クリティッククラブ奨励賞受賞。2003年大阪文化祭奨励賞受賞。2004年大阪舞台芸術新人賞受賞。2001年~2006年、ベレゾフスキーやジルベルシュティンなどを育てた事でも知られる名ピアニスト、故アレクサンダー・サッツ氏(グラーツ音楽大学教授)に師事。現在東京音楽大学講師として後進の指導にあたる。
中西誠先生
トークコンサートは、まるで大学の試験のような緊張感!?

まず、ステップのトークコンサートについてお聞かせください。

ステップトークコンサートは、2年前から既に8回ほどさせてもらっています。これはもう、自分のリサイタルとはまた別の独特の緊張感がありますねぇ(笑)
ピアノも調律も、手の状態も全く「自分仕様」ではないわけです。そして、参加者の子どもたち、実施事務局の方々、他のアドバイザーの先生方も、みんなが見ている中でのコンサートです。まるで、この年になって受けるコンクールや大学の試験のようで(笑)演奏前に、会場内にいる参加者の子どもをつかまえては「鍵盤はどう?重い?」と聞いたりして、事前に情報収集していますよ。
少しでも多くの子どもたちに「音楽っていいな」と感じてもらたいと思って、トークコンサートをやっています。自分の子ども時代を振り返ると、音楽で満たされていた幸せな記憶なんです。そんな子ども時代の自分とステップの子どもたちの姿を重ねあわせてしまうのでしょうね。

「音楽を聴くのが大好き!練習は大嫌い!」の子ども時代
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親指と人指し指(ドとレ)の間がらくらく1オクターヴ以上開くんです。足のサイズは24.5で小さいんですけど、手が大きくて結構開きます。また指の力が強いのも特長ですね。でも、理想的には、その"手"の存在を忘れて、自分の音に聞き入って演奏することですね。

先生の子どもの頃の様子を教えてください。

僕は、3、4歳の頃からピアノを習い始めました。当時、僕は奈良県に住んでいて、今は亡くなってしまわれましたが、下村和子先生に師事していました。優 秀な生徒さんばかりの教室だったのですが、僕は、ピアノの練習が大嫌いで、全然練習しなかった。その代わり「聴く」ことが大好きで、例えばレッスンが午後からの日でも、午前中に先生のお宅に行って、別室に置かれた膨大な量のレコードをずっと聴いて遊んでいましたね。レッスン時間は、全然さらっていないので「コラ!」と叱られていましたけど(笑)与えられた曲の練習は確か1週間に1時間程度。でも、そのほかの曲を手当たり次第にたくさん弾いて遊んでいました。
指揮者のまねごとも大好きだったんです。当時小学生が学校で使っていた、竹でできた"30センチ定規"ってあったでしょう?それを削って、オリジナルの指揮棒にして、作曲家別に何本もそろえていました。これはベートーヴェンのシンフォニー用、これはブラームス用...と。当時、大阪フィルにいらっしゃった朝比奈隆さんが、自身の指揮棒を「これはいつの演奏会でふったもの」とそれぞれの保管されていたというエピソードがあって、そのマネをしたかったみたいですね。
とにかく聴くことが大好きで、コンサートに一日おきくらいのペースで通っていました。下村先生からは、「あさってくん」と呼ばれていたんです。あさってになると、別のコンサートに行っている、というのが由来のようで。近くのピアノの先生の発表会のような身近なコンサートから、大阪のシンフォニーホールで行われる大きなものまで何でも聴きに行きました。中でもカラヤンのコンサートは非常に記憶に残っています。レコードのジャケットでしか見たことがないカラヤンが動いてることにまず感動してしまいました。でも、どんなコンサートも楽しかった。コンサートの帰り道の興奮した気持ち、幸福感を今でも覚えていますね。

先生の音楽観は、子どもの頃の音楽体験から育まれたものですか?

そうですね。あと、僕は師事した先生方に本当に恵まれていたと思います。「ここはこう弾きなさい」ではなく、いかに音楽は素晴らしいか、ということをどの先生も教えてくださいました。僕も生徒たちには「この曲はこのように弾きなさい」とは言いません。「作曲家はどう弾いてほしかったと思う?」と問いかけます。「作曲家の目線に立ってみる」ということが大事なんですよね。かの有名なスペインのサグラダファミリアの主任彫刻家に着任されている外尾悦郎氏が、「偉大な人物に近づくには、その偉大な人物が見ていたものを見る努力をすべきだ」という趣旨のことをおっしゃっていました。作曲家を「こちら側から見る」のではなく、「作曲家側からいかに作品を見ることができるか」という感覚ですよね。作曲家が何を考えていたのか、その作品をつくらなければならなかった動機は何か、その作品を生み出す苦悩に共感できるようになることが理想ですね。

【今後のコンサート情報】

ステップトークコンサート

  • 5月23日 多治見ステップ(多治見市学習館7Fホール
  • 5月30日 つくばみらいステップ(つくばみらい市きらくやま世代ふれあいホール)
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