アドバイザーは手で語る 山下富江先生/鳥居大輔先生
ステップの開催は年間約550地区。のべ1,800名に及ぶ先生方がアドバイザーとして各地へ飛び回っています。
音楽と人生を共に歩む参加者を「応援」したいというのがアドバイザー、そしてステップの在り方。その想いの根源は先生によって様々です。
今回はご自身もコンペ・ステップに参加されている山下富江先生、今年からアドバイザーとして各地をまわられている鳥居 大輔先生にお話をお伺いしました。
山下 富江先生(正会員/静岡県)
これまでに29回ステップアドバイザーを務め、2009年以降毎年コンペ、ステップに参加
- コンペ・ステップのステージに立ち続ける理由
- 年に数回ステップに参加、夏にはコンペティションに挑戦しています。「ステージに立ちたい」という気持ちが高まることが一番の理由ですが、「本番」が曲の完成への近道だとも思うからです。本番はゴールではありません。本番を通して演奏レベルの向上を目指し、終えたあとも演奏した曲が自分のレパートリーだと胸を張って言える状態にしていくことが理想です。
- ステップの現場を見て感じること
- この数年で、主にグランミューズのレベルが上がってきていることを実感し、アドバイザーとしても一参加者としても大変刺激を受けています。
私もステップで受け取ったメッセージ用紙をファイルで保管し、ときどき読み直しては演奏の参考にしています。自分がアドバイザーのときも、「ステージにでてよかった、コメントはためになった」と思ってもらえるようなメッセージを送りたいです。 - 音楽との付き合い方
- 音楽は人の内面を豊かにすると共に、人と人を結びつけるパワーを持っていると思います。
私自身も師匠のステージ姿への憧れから、いつしか「先生」と「演奏家」の両面を持ち続けたいと願うようになりました。また音楽は、師弟関係という縦の繋がりを作るだけに留まらず、新たな人との出会いや交流の場ももたらしてくれます。誰かの演奏を聴きに行き、音楽をきっかけに出会い、音楽談義に花を咲かせることはまさにそうでしょう。
こんなにも多くの人が音楽に惹かれる理由。その一つには、このように素晴らしいご縁を紡いでくれるからという気がしてなりません。
鳥居 大輔先生(正会員/東京都)
2016年よりアドバイザーを務め、これまでに3地区アドバイス
- アドバイザーとして求められていること
- コンクールと違って、参加されている方の置かれた環境や目標がそれぞれ全く違うことがステップ最大の特徴だと思っています。よってアドバイザーは、その人のレベルや当日のコンディションを瞬時に判断しなければなりません。指の動きなど目で捉えられる情報と耳から入ってくる音から、その人の良い部分を探してメッセージを書こうと心掛けています。時間を忘れるほど素晴らしい演奏に出会い、感謝の気持ちで一杯になることもしばしばあります。
- メッセージ用紙の活用法
- メッセージ用紙に書かれたコメントは「考える」きっかけとしていただきたいです。「なぜこのようなことを言われているのだろう?」と疑問を抱き、納得できないこともあるでしょう。コメントを鵜呑みにするのでも気にせず流してしまうのでもなく、問題がどこにあるのか、なぜこのように書かれたのかをぜひ考えてみてください。
- 生徒と一緒に本番に取り組む
- 私の生徒にも、本番前になると「やっぱり人前で弾きたくない」と言う人が必ず出てきます。幼いお子さんだと無邪気さゆえにプレッシャーを感じないこともありますが、年頃になったあたりからは100%言います(笑)。そのようなときは、「どんな偉大なピアニストだって緊張はするんだよ。自分ではガチガチになって弾いたと思っても、聴いている人は気がつかなかった・・・なんてこともあるよ。」と答えています。 本番で明らかに失敗したと演奏者に自覚がある場合、次への繋げ方は自ずと見えてきます。しかし、満足したにも関わらず思うような結果がでなかった場合、不足している点の分析は困難です。私自身も極力生徒のステージを聴き、一緒に課題を模索するようにしています。