ステップ・メッセージの受け取り方~音楽をより楽しく、より深めていただくために~
この秋も全国で多くのピティナ・ピアノステップが開催されます。ピアノを弾くステージは発表会からコンクールまで様々ですが、ステップの大きな特徴と言えるのが「アドバイザー」の存在です。アドバイザーの先生方からは評価や感想が書かれたメッセージ用紙がもらえます。それらはコンクールの採点票に書かれた「点数」や「寸評」とよく似ていますが、その目的は違っています。今回の特集ではステップでもらうことができる「メッセージ用紙」をより活用していただけるヒントをお知らせします。
最近、あなたが(生徒が)アドバイザーから受け取った評価は、自己評価に比べてどうでしたか。
アドバイザー3名からの評価が分かれていたことはありますか。
アドバイザーからの評価やメッセージに関してどんな話をしましたか。
- その他には、人それぞれなので音楽は奥深い、脱力奏法について、これからの指針にした、慰めた等。
演奏の完成度も考慮はしますが、コンクール審査と異なり、演奏の評価をすることが、ステップアドバイスの主目的ではありません。演奏する皆様それぞれが、次の目標を見つけて頂くための「評価」とお考えください。S、A、B、C、Dという五つの評価基準(目安)があります。
- S
感動の度合いが非常に大きい演奏
- A
音楽性やテクニックなどにプラス要素のあった演奏
- B
そのステップでは十分合格できる演奏
- C
もう一息の努力・工夫でさらに充実する演奏
- D
音楽として成立していない演奏、完奏していない演奏(不合格)
もう少し詳しくご説明します。
23ステップの評価は主に「A」「B」「C」の3つです。基準となるのは真ん中の「B」です。「B」をもらえたら、そのステップでは十分合格レベルです。「A」は練習した成果がよく発揮されて、音楽として感動を与えられるくらいの演奏だった場合の評価です。「C」を受け取ったら、アドバイザーが「足りない」と感じられたことが詳しくメッセージに書かれているはずです。ぜひ「チャンス」と捉えてください。「S」は参加者の方がその時点で最高の演奏をされただろうと思われた時におつけします。それは必ずしも「整った」演奏ではないかもしれませんが、アドバイザーの感動が大きかったときには「S」が付きます。「D」は残念ながら「不合格」です。最後まで演奏ができなかった場合などに、アドバイザーの先生方が協議の上で、止む無くお付けするものです。しかし次にどうすれば「合格」になるのか、先生方がメッセージを書きますから、ぜひご参考としていただきたいと思います。
フリーステップには合格・不合格の区別はありません。メッセージ用紙には「Bravo」「Great」「Fine」「Almost」4つの言葉が並んでいます。「評価ではなく感想です」とお伝えしていますが、「Bravo」が最も良い評価で「Almost」が一番低い、という印象を持つ方が多くいらっしゃることは否めないでしょう。「Great」と「Fine」では「Great」の方が「上」と感じる方が多いかもしれません。長年かけてこの4つの「感想」の言葉に対するイメージが広まっていることは無視できません。
しかし、ステップを運営してきた委員たちの考えでは、これらの言葉に「上下」は無いと考えています。最初期のフリーステップではこのような「感想」を表現する仕組みもありませんでした。この「上下ではない」というコンセプトは今後も続けたいと考えています。そこで、ステップアドバイザー委員会が考えるそれぞれの言葉の「使い方」をお知らせします。それぞれの言葉をどのように受け取ればよいのか、ご参考になさってください。
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アドバイザーが心からの感動を強く表したいときの言葉です。ピアノをはじめたばかりの方が音を間違えながら、たどたどしい演奏をされたとしても、心のこもった演奏だと感じて心が揺さぶられたら「Bravo」です。
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高い演奏技術や音楽への深い理解を称賛する際の表現です。よく学び、よく練習されたことに自信を持って頂きたいです。
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ちょっと驚くくらいに面白い表現や、豊かな歌心にあふれた音楽を感じられたときの表現です。アドバイザーの共感が得られたことを励みにしていただきたいです。
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「Almost」は「いまいち」と思われるかもしれませんが、言葉の意味を考えてみてください。決して「マイナス」というわけではありません。「その曲は今よりもっと楽しむことができますよ」と感じたときの表現です。この「感想」がついたときは、特にメッセージをよくお読みいただきたいと思います。
コンクールでは「審査員が正しいと考えている音楽」に沿って採点し、寸評を書きます。いっぽう、ステップのアドバイスは以上でご紹介してきたように、参加するみなさんが「今の音楽」をより楽しく、あるいは深めていただくための「評価」「感想」そして「メッセージ」です。コンクールでは同じ「8.0」の点数がつくような演奏であっても、ステップでは弾く方の学ぶ姿勢や学習進度に応じてまったく違う評価や感想がつくかもしれません。つまり、コンクールは「音楽そのもの」を評価する面が強いのですが、ステップは「演奏する人と音楽の関わり方」を応援するための仕組みなのです。
時に厳しい言葉が書かれたメッセージを受け取ることがあるかもしれません。ステップのステージで演奏する皆様と同様、アドバイザーの先生方の音楽観、人生観も様々です。その違いも楽しみ、糧にしていただくと、豊かな音楽生活を送っていただけるでしょう。同志であるアドバイザーと参加者の方のコミュニケーションを橋渡しするのがステップの仕組みとも言えます。指導者の皆様には、時にメッセージを「通訳」して、生徒さんに伝えて頂きたいと思います。
そもそもステップに関わる方々は「より良い音楽をする」という一つの目標を共有しています。より深く、ステップを活用していただきたいと思います。