アドバイザーは手で語る 飯田有抄先生
ステップの開催は年間約500地区。のべ1500名の先生方がアドバイザーとしてご協力くださっています。アドバイザーの先生方が何を思い、感じ、アドバイスを記すのか、その根源を探ります。
聴き手と共に音楽が作られる
ステップのアドバイザーは三人体制なので、他のお二人が指導者やピアニストとしてメッセージを書くとしたら、私は音楽ライターという立場から、「演奏が聴衆にどう届いているか」を知ってもらえるようなお手紙を書きたいですね。
ある参加者がとても完成度の高い演奏を披露してくれました。でも、「隙」がなさ過ぎて聴き手をドキッとさせる何かはありませんでした。準備万端の演奏が、必ずしも観客を引き込むとは限らないのです。 逆に、練習は充分ではなくても、曲を楽しく満喫している様子が伝わってくると、客席でも一緒に演奏を作り、共に音楽しているような幸福な気持ちになります。
素晴らしい演奏とは、聴き手の「一体化スイッチ」をONにしてくれる演奏だと思います。音楽のダイナミックなうねりに聴き手を巻き込み、奏者と一つにしてくれるのです。聴き手もうねりを共にしていれば、少々のミスタッチなど気になりません。聴き手自身が音楽のゆくえを一緒に想像し、補完できるからです。
そんな演奏に近づくための第一歩は、まず「自分がその場で出した音をよく聴く」ことではないでしょうか。練習通りに自動的に弾くだけではなく、自分もその場で「聴く」ことで音楽を俯瞰し、観客にどう届いているかを意識してほしいです。音楽は観客と共に作られる、ということをアドバイザーの仕事を通じてお伝えしていきたいと思っています。
(会報320号より)
あなたがこれまで受け取った中で心に残っているアドバイザーのメッセージや、アドバイスに関する印象的なエピソードや要望がありましたら、ぜひお聞かせください!
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