作品の解釈の可能性を探し続ける

ステップでは大変熱心なベテランの先生方にお会いできるので、その音楽教育にかけるパッションにいつも 刺激を受けています。また、ステップでの皆さんの演奏を聴かせていただく中で、多様な音楽観に触れることができるのは大きな喜びです。アドバイザーとして現場をまわって一層、音大生一人一人の裏にある先生方とご家族の情熱を感じるようになりました。

ステップで演奏を聴くときには、何歳の子でも、その人の解釈を聴きたいと思っています。やっているつもりなのに伝わらない、その難しさは私も日々演奏する中で直面していることですが、その子のやりたいことがより伝わるように、そんな視点でアドバイスを書けたらと思っています。普段の指導においても、楽譜から特に何も見出せずに弾いている子には質問を投げかけ、解釈の「可能性」を提示するよう心がけています。

指導者としては、生徒が自ら音楽の可能性を追究するために、不足なくテクニックを身につけてもらえたらと常に願っています。また、どんな進路、仕事を選ぼうと、音楽はずっとそばにあって、自分の音楽を深めるための研究はどんなペースであれ、ずっと続けられるのだという意識を若いうちから持ってほしいです。

昨年の秋に初めてステップのトークコンサートを務めさせて頂きました。トークコンサートでは、短時間で演奏に向けた集中力とエネルギーを高めることが必要です。その点で他のコンサートとは別の難しさを感じますが、私もそこを乗り越えて音楽の魅力をしっかり伝えられるように、そして子供達やご家族ができるだけイメージを持って音楽を聴けるようなお話とプログラムを選びたいと思っています。

（会報330号より）