ステップ課題曲 選曲ノート 第2回 マッチ棒のマーチ
指導経験豊かなステーション代表が、おすすめのステップ課題曲を紹介します。心惹かれる曲、あなたの成長につながる作品との出会いが、ピアノを続ける原動力になりますように。
私が紹介する曲は、池辺晋一郎「マッチ棒のマーチ」です。
マッチぼうって?と思うお友達が多いのではないでしょうか。「マッチって、火をつける道具。こすると火がつくのよ。見た事ある?」と説明を受け、スマホで検索するのが今の時代。この曲が作曲されてから15年しか経っていないのに、マッチを見かけることはありません。
- タイトルからイメージを膨らませてみよう。
- 速度記号は?/拍子記号は?/調は何調?何色がみえる?
- 様式は?/どんなリズムが多い?
- 左手の動きは?右手の動きは?
- どこに向かってどういう響きにしよう?/どんなテクニックが必要?
この曲は4分の4拍子で、ABAの3部形式になっています。スタカートが多用されていることに目が留まります。
右手の冒頭の連打は「タタタン・タタタン」のリズムは陽気な雰囲気でシンプル。「321」と指定がありますが、「333、222」でも構わないと思います。2小節目のソソソレは5度の跳躍ですが、6小節目はソソソミで6度になっています。9小節目~12小節目の右手には全てスラーがついていて、9小節目~10小節目はF→E→Es→Dの半音下降。11小節目~12小節目は前の2小節のヴァリエーションですね。FとA、EsとGの3度音程が面白い!短調の穏やかなメロディから再現部への移行がとても魅力的で、この部分の音楽作りが聴かせ所です。
左手は冒頭から3度のダブルで「タッタッタッタッ」と動き、まさに行進。こちらもリズムはシンプルですが、和声の変化により様々な表情をのぞかせます。特に13小節目からのDの音の支えはこの曲をビシッとまとめています。Augやdimコードがスパイスとなってハーモニーを豊かにしており、中でも最大のポイントは最後の小節の左手2拍目、Asの音でしょう。
両手どちらもスタカートがつくことで、楽しさが増しているこの曲。スタカートも色々な種類があり、手首から使う/指先ではじくなど弾き方によって音色が変わります。どんな表情をつけるかぜひ吟味したいですね。
同じマーチでも、ライオンのマーチ(サン・サーンス)や子犬のマーチ(作曲者不明)は子どもたちも簡単にイメージできるはずです。対して「マッチ棒のマーチ」はどうでしょう。なんだなんだ?どんな曲?と思わせるインパクトとキャッチーさがありますよね。きっと池辺晋一郎さんは余程のヘビースモーカーだったに違いない!灰皿の上の大量のマッチ棒とシケモクを見ていたら、テーブルの上に並べたくなり、それが行進をしているように感じられて、思わず作曲したのではないかと想像してしまいます。
コンペティションの課題曲になる前から、この曲はあちこちのステップで演奏されていました。みなさんハーモニーの変化を付けつつ、軽快に楽しそうに弾いていたのが印象に残っています。聴いていても楽しい気持ちが湧いてきて、私の心に特に深く刻まれた1曲です。
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昭和感たっぷりの雰囲気が魅力です。(応用2) この曲が収録されている「海の日記帳」は三善先生自身の演奏音源もあるので特におすすめ。 |